【会員定着】身体活動を増やす意識と「ウオーカビリティ」について
(株)プロフィットジャパン 菊賀信雅

厚生労働省では、2013年に健康づくりの為の身体活動指針として、1日10分間余分に身体活動を増やすことを目安として、新しいアクティブガイドが作成されました。また歩数については、「健康日本21(第2次)」の目標値: 20~64 歳 男性9,000 歩 女性8,500 歩で、65 歳以上 男性7,000 歩 女性6,000 歩であり、実際は目標に対して、1,000歩以上少なくなっており、自治体単位で各年齢で、最低1,000歩(身体活動10分)の歩数をのばす工夫をしています。

図1

一方、日常生活の中での現在の身体活動の状況は、覚醒時間のうち、55~60%が、座位行動(Sedentary behavior) (1.5メッツ以下)、35~40%が低強度活動〔Light-intensity〕 (1.5~3メッツ)、約5%が中高強度活動〔moderate and vigorous-intensity〕(3メッツ以上)です。〔図1〕
起きている時間のうち5%が3メッツ以上の身体活動ですが、睡眠時間を仮に8時間とすると、16時間が起きている時間で、そのうちの5%、48分が、身体活動の時間となります。身体活動といっても、通勤での徒歩時間や買い物の時間、その他仕事や家事での必要とされている行動のための時間であり、新たにその時間を余分に10分増やすということは、約20%アップですから、かなり高いハードルだといえると思います。
そこで、まずは、半分以上を占める、座位行動から低強度活動への行動に移行する意識を持っていただくことから始めます。座位行動と低強度活動は、トレードオフの関係(片方が減ると片方が増える)であり、座位行動は1メッツ、低強度活動は2メッツですから消費エネルギーは2倍になります。フィットネスクラブで、今の日本人の生活様式と座位時間等の情報を提供し、身体不活動である座位行動は、良くないことを啓蒙し、日常生活の中では低強度活動に意識していただき、フィットネスとして週に2回は、クラブで中強度(moderate-intensity)以上のトレーニングをしていただくことをカウンセリングすることが必要です。

また、最近注目されているのが、『ウォーカビリティ(Walkability)』という概念です。
聞き慣れない言葉だと思いますが、これは「歩く」(walk)と「~できる」の(able)を組み合わせて作られた「歩くことができる、歩きやすい」という意味の言葉で、地域環境の歩きやすさを表す概念です。肥満問題を抱える西欧諸国において、健康維持・向上のために環境面から働きかけようという取り組みのひとつです。アメリカでは、成人のおよそ68%が肥満であると言われています(Flegal et al. 2010)。厚生労働省の「平成25年国民健康・栄養調査」(2014)によると、日本の肥満率は男性約29%、女性約20%ですから、アメリカの肥満問題はまさに「国家的な危機状態、個人レベルの治療や生活習慣改善の努力ではもはや対処できない危機的状況に達している状況です。
そうした中で注目されるようになったのが、都市空間を健康的なものに変えることによって、そこで生活する人々が食生活や運動習慣を負担の少ないかたちで改善できるようサポートすることを目指した、環境面からの肥満問題へアプローチです。ウォーカビリティの研究では、都市を歩きやすくすることで、日常の中の徒歩移動を促進し、自然に身体活動量を増加させることを目標としています。

ここで、日本の風景として出てくる①~④写真を見てください。







さて、①②と③④あなたなら、どちらの住環境を選びますか。
⓵と⓶は、東京の下町の商店街の雰囲気です。⓷と⓸は、郊外の住宅地の雰囲気だと思います。

今までの、日本では、経済成長に伴い、人口増加を前提にした街づくり、空間づくりを意識して、新しい住宅を郊外に建てるという、アメリカ的な住環境を作ってきていました。住宅だけがたくさん立ち並び、単一の土地利用に特化した地域づくりとなりました。それだと接続性の低いネットワークとなり、『ウォーカビリティ』からみると、歩く機会が減り、車の移動が多くなってしまいます。これからは、複数の土地利用が混在した地域を意識して作ることで、接続性の高いネットワークとなり、それが、歩く機会を多くする『ウォーカビリティ』の高い地域となるのではないかと思われています。

A.接続性の低いネットワーク


B.接続性の高いネットワーク

肥満の根本的な原因は、摂取エネルギー(食事)> 消費エネルギー(身体活動)のエネルギー出納の問題です。
摂取エネルギーは年々減っています。にもかかわらず肥満者が増えるのは、それよりさらに身体不活動になっているからです。
フィットネスクラブは、非日常であり、日常生活に身体活動を取り入れることが不可欠です。
車より自転車、自転車より徒歩、どうしても車が必要な場合は、駐車場の一番遠いところに駐車して歩くなど、意識して歩こうと思えばいくらでも身体活動は増やせます。

最近は、下町の商店街が見直され、都市部ではウォーカブルな視点にたってのまちづくりが少しずつ進んでいます。
それをフィットネスクラブでも積極的に関わりを持っていく事が大切です。
フィットネスクラブは、周辺の比較的安全な歩道を使ってのウォーキングコース〔地図に書いて会員に配るだけ〕を複数作成して会員に周知し、ウォーキングステーションとしての機能を備えたり、地域の商店会や自治会と共同でイベントを計画するなど、より地域に密着した活動が必要と思っています。そうすれば、チラシ一辺倒の営業活動からの脱却にもなり、地域のコミュニケーションの場としての核になることも可能だと思います。